始まりはさかのぼること2016年、(株)キャットアイ代表取締役社長・津山氏、ブランド『maware』を運営する(株)K・L・C PRODUCTS代表取締役社長兼デザイナー・片岡氏、両者の出会いでした。
世界中に安全を届けたいキャットアイの想いと、自転車と日常をつなぎ自転車をライフスタイルとして楽しんでもらいたいmawareの想い、2つの想いが重なり、コラボレーションの企画がスタートしました。
そんな中、キャットアイから画期的なセーフティライト「ウェアラブルミニ」が発売されました。
ウェアラブルミニ[SL-WA10]
希望小売価格:1,200円+税
ウェアラブルミニは、直径わずか33mmの小型セーフティライト。
クリップ・ゴム・マグネットなどを使うことで、様々なものに簡単かつ直感的に装着できる、画期的な製品です。
シンプルなラウンドデザインを採用しているため、あらゆるシーンに馴染むコーディネートが可能。
車体についているリアライト(リフレクター)に加え、2つ目のセーフティライトを採用することで、後続車からの視認性は飛躍的に向上するため、夜間サイクリングの安全性をさらに確保することができます。
「このウェアラブルミニを通し、世の中の方々に安全を届けることはできないだろうか。」
すぐにウェアラブルミニの価値に気づいた片岡氏は、セーフティライトをスマートに装着できるサコッシュを世に送り出すことで、より多くの方々にその安全な価値を伝える方法を提案しました。
このとき、サコッシュ・エ・ルミエールの息吹が静かに芽生えたのです。
そこからは、2人のトップ同士による国内外での打ち合わせ、さらに両社の主要開発メンバーが集まってのミーティングが何度も繰り返し行われました。
必要とされる機能は何か。
ロングツーリングにも、街乗りにもマッチするデザインが欲しい。
ウェアラブルミニの脱着は、なるべく簡潔に。
どうすればより多くの方に届けられるのか。
様々な意見が交わされましたが、両社に共通した意見は、安価でお座なりなものではなく、ユーザーがその魅力を理解して手に取ってくれる、確かな価値を感じることができる製品を作りたい。
良いモノを作り、できる限り長く使っていただきたい、というコンセプトでした。
このコンセプトの実現のためにまず必要なことは、信頼できる品質を持った素材を選ぶことでした。
ラフスケッチを元に、サコッシュのデザインや細部の仕様が入念に打ち合わせられた。
試作品を見ながらのミーティングも繰り返し、細部の見直しを重ねる。
まず最初に選定するべき素材は、ボディ用の生地です。
長期に渡って使い続けるための耐久性、そしてサコッシュに上質な雰囲気を与えるために、素材としての魅力が必要となります。
この素材に選ばれたのは、伝統と品質の高さで定評のある、倉敷産の帆布でした。
多くのバッグによく使われている合成素材は紫外線に弱く、ダメージを受け劣化するというデメリットがあります。
しかし天然の綿素材は紫外線に強く、屋外での使用にも優れた耐久性を持っているのです。
また、アウトドアでの使用が前提となるため、雨や汚れなどへの強さが必須と考えました。
そこで目をつけたのが、明治21年創業の老舗帆布メーカー『タケヤリ』が作る、超撥水帆布。
その名も『タイガー帆布』です。
タイガー帆布は、『タケヤリ』が作るオリジナル帆布。
自衛隊のテントに使われる技術を応用し、通常よりも強力なパラフィン(ロウ)加工を施しているので、JIS撥水度試験4級をクリアしています。
雨や汚れの付着にも強く、アウトドアでの使用にはぴったりの素材と言えます。
また、撥水加工により素材そのものの張り(固さ)も上がっており、しっかりと丈夫な質感。
この固さは、使用とともに少しずつ柔らかくなり、手に馴染み味わいが増していくという特徴にもなっています。
実物を取り寄せ、質感をじっくりと確かめて選ばれた『タイガー帆布』。
強力な撥水効果は、かけた水が水滴となって流れ落ちていくほど。
メインとなる素材は決まりました。
しかしまだ安心はできません。
各部仕様や細かいパーツの素材など、サコッシュ全体の隅々までに気を配る必要があります。
メイン素材となる帆布以外にも、各部位にこだわりの素材を散りばめました。
まず本体の両サイドで静かな光沢を放つ、大振りのナスカン金具です。
バッグの製作では、原価を下げるためにメッキ仕上げの金具を使うことがほとんど。
しかし、帆布の存在感に負けないようにするためには、金具にも強い存在感が必要となります。
そこで、通常よりも大振りで肉厚の、真鍮無垢の国産金具を採用しました。
メッキはいずれ摩耗により剥がれ、地の金属色が覗くと傷のようになり見栄えが落ちてしまいますが、この金具は無垢材のため、ずっと美しい真鍮の質感を楽しむことができます。
また、真鍮は使用とともにくすんでいきますが、それが経年変化の味わいとなり、同じく経年変化した帆布の風合いとベストマッチします。
真鍮の鈍い光沢が、帆布の風合いとマッチする。
デザイン上のアクセントとなる、本体右側に取り付けられた革製のロゴプレート。
この素材には、イタリアの職人が一枚一枚手作業で染色した、自然な風合いが魅力の高級タンニン革をセレクトしました。
この革の特徴は、表情豊かな天然のシボ(シワの模様)です。
下の2枚の写真を見比べてみてください。
同じ種類の革にも関わらず、部位によって異なる表情が現れています。
手間のかかるナチュラルな製法にとことんこだわって作るからこその、天然素材ならではの自然な表情です。
それぞれのサコッシュに、まるで一点物であるかのような唯一無二の個性を与えています。
また、この革は天然油をたっぷり含ませたオイルレザーのため、多少の水濡れにも強く、アウトドアでワイルドな使い方をしても神経質になる必要はありません。
美しい質感と、使うほどにツヤが増す経年変化を楽しんでいただけます。
各部の仕様にも、サコッシュとしての機能性を上げるための工夫を凝らしています。
バッグに水がかかったとき、水分のほとんどはパーツの繋ぎ目から侵入します。
そこで、表裏の本体を組み合わせている繋ぎ目の部分には、ラミネート加工を施した防水の生地を独自にテープ状に加工し、ふちどりを施しました。
撥水帆布と掛け合わせることで、通常のサコッシュよりも非常に高い防水性を得ることができました。
ウェアラブルミニを取り付けている、ボディを横切るベルト。
この部分には、アイウェアやグローブなど、ちょっとした小物を引っ掛けて保持させることができます。
自転車からさっと降りて軽く買い物をするときなど、身に着けていた小物を持ったままでは手がふさがってしまい、お財布から小銭を出す動作などが意外としづらいものです。
そんなときは、このボディベルトに引っ掛けておくことで、両手を空けることができます。
自転車から降りたとき、アイウェアやグローブなどを引っ掛けて保持することができる。
サコッシュそのもののデザインは、なるべく多くのシーンでコーディネートできることを意識しました。
本格ライディングではサイクルジャージ。
ちょっとしたお出かけではカジュアルな普段着。
また通勤時などは、少し上品な襟つきのシャツスタイル。
それぞれのファッションで違和感なくマッチし、さらに自転車に乗っていないとき、街中で使っても問題なく馴染むデザインになっています。
ロングライディング時など、スポーティなジャージスタイルで問題なく使えるデザイン。
デニムなどのカジュアルスタイルでも、帆布と革の質感がぴたりとマッチ。
少し上品な襟つきのシャツなどでも、違和感なくコーディネート可能。
ボディベルトに手を差し込むことによって、クラッチバッグとしてお使いいただくこともできます。
ショルダーバッグタイプのサコッシュとして、そしてクラッチとしての2WAY仕様になっているため、上記のデザインと相まって非常に多彩な使い方が可能です。
これは、「自転車に乗っていないときも使うことができ、いつでも自転車を感じられるアイテムを」という、mawareのコンセプトが生きたデザインになっています。
ちょっとしたお出かけのとき、身の回りの小物を持ち運べるクラッチバッグとしても使用可能。
仕様やデザインが決まれば、製作開始となります。
一つひとつのサコッシュを、mawareの職人が手作業で丁寧に組み立てていきます。
このようにして、やっとサコッシュ・エ・ルミエールが完成しました。
元はといえば、セーフティライト「ウェアラブルミニ」を通し、もっと大勢の方々に安全を享受してもらいたいという想いから始まったサコッシュづくり。
たくさんのこだわりを託すことで、サイクリングの安全性だけではなく、快適さ、そして楽しさを手助けできるアイテムとして、自信をもってお送りできるものができました。
一人でも多くの皆さまにご活用いただき、ご満足いただけることを願っています。